- ものづくりのルーツを探る
the roots of craftmanship
ビルシュタインものづくりのルーツを探る
世界最高品質を目指してリニューアルに挑んだSSダンパー。
その成功は、世界的なパーツメーカー・ビルシュタイン社との提携なくしてはあり得ないものだった。
そこで今年の6月、ドイツにあるビルシュタイン社を訪ね、最終調整を兼ねて同社のものづくりのルーツを探った。
ビルシュタイン発祥の地・エナペタルを訪ねて
フランクフルト国際空港から車に乗り換え、一路ビルシュタイン社ヘ。アウトバーンを激走する車窓からは、広大な緑の大地が切れ目なく続いて見える。アウトバーンに速度無制限区間があるのは有名な話だが、さすがは自動車王国・ドイツとあって高速料金も無料だという。アウトバーンを降りて山道を進むと、静かな山間の田舎町・エナペタルに到着。ここが世界的なパーツメーカー・ビルシュタインの本拠地だ。エナペタルの街の一角には「オーガスト・ビルシュタイン・シュトラッセ(ビルシュタイン・ストリート)」と名づけられた通りがあり、地域の人々がどれほど同社に誇りと愛着を感じているかが窺える。
ビルシュタイン社は全ての製品の研究開発や少量多種対応の生産部門の「エナペタル」と大量生産のためにオートメーション化されたOE製品、試験を行う「マンダン工場」がある。入口では、街のシンボルであるキツネの像が出迎えてくれた。この地域にはかつて多数の洞窟が存在していたらしく、昔の人々は迷子にならないようにキツネの尻尾をつかんで歩いたという言い伝えがある。工場見学へ向かう途中の通路脇のレンガ塀にも、ところどころに改修の跡が目立つ。「壊して作り直す」…いわゆるスクラップアンドビルドではなく、「良いものを永く使う」という文化が工場の至る所でも見受けられたのが印象的だった。
ビルシュタインストリート
ビルシュタイン社入り口
訪問の第一の目的は、新商品の製造開始に向けた最終調整
私たちが今回遥々ドイツに赴きビルシュタイン社を訪問した目的は、新商品の製造開始に向けて最終調整を行うためだった。また、自動車業界が憧憬の念を抱くビルシュタイン社の「ものづくり」が、一体どのような場所で、どのように行われているのかを肌で感じたかった。もうひとつはフェイストゥフェイスでこちらの思いを伝え、強固な信頼関係を構築することだった。
訪問中には、ランチタイムに社長(アフターマーケット部門)シュピパート氏が私たちにわざわざ会いに来てくださり、「I’m very interested in your housing project!」という言葉もかけていただいた。このプロジェクトへの期待感がダイレクトに伝わり、身が引き締まる思いがした。
左)ビルシュタイン 社長 シュピパート氏
中)ビルシュタイン 営業統括本部長 ビーガホフ氏
右)(株)阿部商会 副社長 阿部良太氏
※肩書はいずれも当時
厳正なテストと多様なシミュレーションを積み重ね
妥協なく追求する最高の品質
私たちは、ビルシュタイン社のマーケティング担当であるドミトリス氏の案内で、工場内を視察した。エナペタルのビルシュタイン社には「ワーク1」、「ワーク3」(現在は稼動していないがワーク2ではオーガストビルシュタイン時代、窓ガラスの金具を製造していた。私たちの事業と合い通じるものがあり親近感を感じる。)と呼ばれる工場がある。「ワーク1」は研究開発を司る工場であり、全ての製品はここから生まれるといっていい。工場内は機密保持のため撮影不可だったが、新開発の製品についての厳正なテストと検証が繰り返し行われていた。「ここから生まれた製品は、メルセデス、ポルシェ、アストンマーチン、アウディ、BMW、ランドローバー等、世界に名だたるハイクラスの自動車に採用されます。ですから、我々は常に社会的責任を感じながら、開発、研究、製造を手がけているのです」と営業統括本部長ビーガホフ氏は語る。
※尚、ビルシュタインはアメリカ、ルーマニアにも工場があり、中国工場も稼働準備中である。
ポルシェ、メルセデス、世界最高峰の自動車メーカーと
構築し続けてきた信頼関係
一方、「ワーク3」ではアフターマーケット中心の少量多種対応の生産部門であり、熟練技術者の手により自社製品のメンテナンスも行われていた。右の写真は、数十年前のポルシェ911のオーナーから送られてきたビルシュタイン製のショックアブソーバー。純正はグリーン色だが、オーナーが独自で装飾したようだ。今回はこれをオーバーホールしてほしいとの依頼だという。このように、愛車に何年間も装着しているショックアブソーバーを手直ししたいというオーダーは数多くあり、ビルシュタインはそれに随時対応している。自社製品は最後まで徹底的にフォローするという姿勢に、「ものづくり」の真髄を見た思いがした。
今後の取組みに向けた最終的な商談を無事に成し遂げた私たちは、最後に営業統括本部長ビーガホフ氏や技術担当者らと固い握手を交わした。
より強固なものとなった互いの信頼感とパートナーシップ、徹底したテストと多様なシミュレーションを積み重ね実現する世界最高品質のものづくり…… 今回の訪問によって得た収穫は期待以上に大きいものだった。 そして我々の新製品は、これからいよいよ量産体制に入っていく。
数十年前のポルシェオーナーから送られてきたショックアブソーバー
営業統括本部長ビーガホフ氏と固い握手を交わした
左)千博産業(株) 代表取締役社長 渥美幸久
BILSTEIN装着車がトップを独占!!
2014年のニュルブルクリンク24時間耐久レースはPhoenix Racing Audi R8 LMS ultra(BILSTEIN装着車)が優勝した。
Top5の内、3台がBILSTEINの2Wayシステム modular damper system(MDS)装着車両であった。
1位 Phoenix Racing Audi R8 LMS ultra
2位 Black Falcon Mercedes Benz SLS AMG GT3
5位 Aston Martin Vantage GT3
MDSはモータースポーツの成功に必要な条件であり、24時間耐久レースの要求にも応えるサスペンションシステムであることを
今年もまた、証明しました。