制震ダンパーを徹底比較! 種類と形状、失敗しない選び方とは

耐震にプラスすることで地震から住宅を守ることができる「制震」に注目が集まっています。制震を実現する装置である「制震ダンパー」には様々な種類があることをご存じでしたでしょうか?
制震性能の採用を検討している方は何を基準にダンパーを選ぶべきか判断するために、比較ポイントを理解しなければなりません。

この記事では制震ダンパーを構造、形状、など様々な視点から比較して、優れた制震ダンパーの選び方を説明します。

制震ダンパーとは

制震ダンパーとは、住宅など建築構造に組み込むことで地震の揺れから建物を守る装置の総称です。自動車のショックアブソーバーのように伸縮することで地震の揺れをエネルギーを吸収して変換し、建物にダメージを与えることを防ぎます。

他に「振」という字を用いて「制振ダンパー」と表記することもありますが概ね同じものを指し、ただし「制振」のほうがより細かな揺れにも反応できることを意味する場合があります。

耐震と制震の違いについて詳しく知りたい方は、以下の記事も参考にしていただけます。
>『制振って何?耐震とは違う?木造建築には制振構造が必須である理由』

制震ダンパーの3つの種類とその比較
制震ダンパーには構造の異なる3つの種類があります。目指す効果は同じながら特徴が異なるため、まずはこの違いに注目して比較します。

  • 種類による比較①:油圧(オイル)系ダンパー
    種類による比較②:ゴム系ダンパー
    種類による比較③:金属系ダンパー


種類による比較①:油圧(オイル)系ダンパー


油圧(オイル)系のダンパーは、容器の中の油(オイル)が緩衝材となって揺れの衝撃を吸収します。まさに自動車のショックアブソーバーと同様の技術を用いている制震ダンパーです。

劣化や損傷に強いため繰り返しの揺れにも効果を発揮できるメリットがある一方、他の種類と比較すると高性能で作りが複雑な分、価格が高い傾向にあることがウィークポイントであるといえます。

種類による比較②:ゴム系ダンパー

ゴムやアクリル樹脂など、伸縮性のある資材を用いて振動を吸収するのダンパーはゴム系に分類されます。

伸びてもまた縮むという資材の性質を利用することで、オイル系と同様に繰り返しの地震に対しても有効ですが、揺れ以外に気温によっても伸び縮みしてしまうため、劣化が早いというウィークポイントがあります。

種類による比較③:金属系ダンパー

金属の柔軟性を利用し、揺れによって”曲がる”エネルギーを”熱”エネルギーに変換することで揺れを抑えるのが金属系ダンパーです。
他の種類と比較して構造や材料がシンプルであるため安価であることが特徴ですが、繰り返しの変形によって劣化や損傷の影響を受けやすいことがウィークポイントです。

比較2:制震ダンパーを形状ごとに比較

制震ダンパーの形状には主に2つの種類があります。「筋交いダンパー」と「仕口ダンパー」です。次はこの形状ごとの違いを比較します。

  • 形状による比較①:筋交いダンパー
  • 形状による比較②:仕口ダンパー

 

形状による比較①:筋交いダンパー

柱と柱の間に斜めに入れて構造を補強する部材のことを「筋交い」といいます。この筋交い状に組み込む制震ダンパーは「筋交いダンパー」と呼ばれます。

次に挙げる「仕口ダンパー」と比較して大型なのが特徴で、大きさゆえに必要な本数が少なくて済むことと、安心感があることがメリットです。また壁の構造を補強する副次的な効果を期待できるものもあります。

一方で、添え木などの副資材がなければ取り付けられず、また重量もあることから施工に複数人数を要する点がデメリットであるといえます。施主の視点からすれば、工事費用が高くなる懸念があることになります。

また壁の構造を補強するというメリットは「制震」ではなく「耐震」の考え方であり、”耐震にプラスして建物をダメージから守る”という制震本来の役割からズレてしまうという見方もありますので、これをメリットと捉えるかどうかには議論の余地があります。

形状による比較②:仕口ダンパー

柱(縦)と梁(横)の構造が交わる部分を「仕口」といい、ここに取り付けるタイプの制震ダンパーは「仕口ダンパー」と呼ばれます。

筋交いダンパーと比較して小型であるために、副資材なども不要で施工が簡単であり、仕口の強度を補強するという副次的な効果を持つことがメリットです。

一方で、本数が多く必要になるため費用がかさむ場合があり、また取付に技術を要することがデメリットであるといえます。


まとめ:制震ダンパーを比較した結果は?

様々な観点から制震ダンパーを比較しました。

まず構造については、価格を除いて「オイル系ダンパー」が優れていることがわかります。安全のために導入する装置ですから、多少の価格差は飲み込んでオイル系ダンパーを選ぶべきでしょう。交換やメンテナンス、また万一の被災を考えれば、トータルでの差は大きなものではありません。

続いて形状による比較です。形状についてはわずかなメリット・デメリットはありながらも、施主の視点からすれば大きな差異はないことがわかりました。これは住宅の構造や施工する住宅会社の特性に合わせて選べば良いといえます。

結論を述べるならば、筋交いダンパーか仕口ダンパーかは住宅に合わせて任意に選び、構造としてはオイルダンパーを選ぶべきということになります。
さらに最後に申し上げるとすれば、特徴として「小さな揺れにも反応する」という点を重視すべきです。わずかな揺れに反応して建物へのダメージを抑えることは制震ダンパーの本質的な目的であり、必須の要素です。「壁の強度を補強する」などと謳う商品もあり、一見すると魅力的に思えますが、制震ダンパーにはあくまでも「制震」の性能を求めるべきでしょう。

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