平屋に制振装置が必要な理由を徹底解説
資産価値の続く家づくりに大事なことは?
平屋住宅を建てるなら、地震対策について深く考える必要はないと思っていませんか?
なぜなら、「平屋は地震に強い」と一般的に言われているからです。
確かに、住宅の階数によって「地震対策」が大きく変わるとイメージする人も多いでしょう。しかし実際には、平屋と2階建て、3階建ての住宅に対する地震対策は変わりません。
住宅といえば「住みやすさ」「デザイン」「土地」といった項目が重要だと考えがちですが、地震大国である日本においては、絶対に地震対策を軽視してはなりません。
たとえば「耐震」は、住宅が地震によって倒壊することを防ぐ「地震対策の基本」です。耐震性の高い家づくりを行えば、災害時にも家屋から安全に脱出する時間を確保することができます。
住宅の地震対策を考えるときに覚えていただきたいのが、「耐震」だけでは住宅の安全や資産価値を高品質な状態で長く保つことは難しい、ということです。ではどうすれば良いのかというと、これから住宅を建てるのなら「耐震+制振」を考えた住宅にするのが最適解です。
このブログでは、以下の情報を紹介します。
- ◆平屋と2階建て、3階建ての住宅は地震対策の基本は同じ
- ◆地震対策として「耐震+制振」を設ければ、住宅の資産価値を維持できる
読了していただければ、家づくりには耐震・制振を考えるのが大切だということ、そして資産価値を維持した家づくりの知識が身につきます。
ぜひ資産価値の続く家づくりの参考になさってください。
目次
・近年は平屋住宅が人気
・住宅の地震対策のポイント「耐震」と「制振」
・耐震とは
・制振とは
・なぜ耐震だけではダメなのか 2つの弱点とは
・平屋の地震対策の真実 よく言われていることは本当に正しいのか?
・平屋、2階、3階建てを問わず「耐震+制振」が住宅の耐震性能や資産価値を長持ちさせる
・さいごに
近年は平屋住宅が人気
平屋とは1階建ての住宅のことを言い、次の理由から特に近年では幅広い年代の人気を集めています。
・上下移動がないので、年齢を問わず住みやすい
・高層住宅ではないので、地震に強い
特に重視されるのが、平屋は地震に強いというポイントです。平屋は建物の重心が低いため地震に耐え抜く力があるというイメージを持たれており、地震対策があまり必要ではないと思われがちです。しかし実際には、平屋であっても2階建てや3階建てと同様に地震対策が必要なのです。
未だ記憶に新しい、2016年の熊本地震の例を挙げてみましょう。最大震度7を観測したこの地震では2階建て、3階建ての住宅の倒壊が確認されたことはもちろん、平屋の倒壊も数多く認められました。
確かに高い建物の方が倒れやすいのですが、構造面の対策をしっかりと講じていなければ、建物の階数に関わらず倒壊のリスクは高まります。
熊本地震での平屋の被害状況
一方、「耐震等級」に着目してみましょう。
同じ熊本地震において、最高ランクである「耐震等級3」の住宅は、平屋・2階建て・3階建てを問わず、一棟も倒壊しませんでした。
住宅の地震対策のポイント「耐震」と「制振」
建物が地震に耐える性能のことを称して耐震性能といいます。聞きなれた言葉のように思うかもしれませんが、「耐震」と「制振」に分けて掘り下げることで理解が深まります。
ここでは、耐震性能と深い関係性のある「耐震」と「制振」について解説しています。耐震性能について理解するためにも、ひとつずつ見ていきましょう。
耐震とは
耐震とは、堅牢な構造によって地震のエネルギーに耐え、建物を守ろうとする考え方です。建物の耐震性能に応じて3段階の「耐震等級」でレベル分けされ、数値が高いほど耐震性能が高いことを表わします。
特徴をまとめると以下のとおりです。
- 耐力壁と呼ばれる頑丈な壁を設けることで住宅の耐久力を高められる
- 中・小規模地震がきても大きな損傷はしない
- 予測困難な大規模地震が起きても、中にいる人が外に逃げるまで倒壊の時間を確保できる
耐震の目的は、建物の強度を高めて地震による揺れで倒壊してしまわないように対策することです。しかし、住宅にとって欠かせないこの「耐震」ですが、近年の大型地震の例を見ると、繰り返しの揺れによって耐震要素が劣化し、住宅の安全性を十分に確保することができなくなってきていることが分かっています。先ほども例に挙げた熊本地震では、震度7の大規模地震が2回発生し、さらにその後には合計で3,810回(震度5以上の地震:20回、震度4以下の地震:3,790回)もの余震が発生しました。
単発で発生した大規模地震だけでなく、継続して小・中規模の余震が立て続けに発生すると建物にダメージが蓄積され、住宅の骨組みである構造部の損傷が進みます。この状態でさらに一定規模以上の地震が来てしまうと、住宅が倒壊に至る可能性が高まってしまうのです。
地震による揺れを構造だけで耐えようとするのではなく、小さな揺れがもたらすダメージを吸収して耐震性能の劣化を防ぐ必要があることがわかりました。これを実現する技術として、「制振」に注目が集まっているというわけです。
制振とは
「制振」とは、地震の揺れを吸収する技術のことであり、建物構造に組み込まれた「制振装置(エネルギー吸収装置)」が揺れのエネルギーを吸収して、建物の構造を守ります。この技術は元々、ビルや橋などの大型の建築物、建造物に対して用いられていましたが、地震の頻発化や近年の技術発展に伴って戸建て住宅にも利用されるようになりました。
地震によって揺れが繰り返し発生すると、ダメージが蓄積されて耐震性が劣化する可能性が高まります。「制振」によってこの蓄積ダメージを軽減することで住宅の耐震性能の劣化は防がれ、住宅の寿命を延ばせるのです。
なぜ耐震だけではダメなのか 2つの弱点とは
これからの地震対策は「耐震」と「制振」の両方を考える必要があることがわかってきたかと思います。続いては「耐震」の2つの弱点を正しく理解することで、「制振」の重要性を確認してみましょう。
1つ目の弱点は「堅い家は受ける衝撃が大きい」ということです。
耐震等級が高い住宅は丈夫なつくりであるため、家が頑丈である分、地震時に構造が受ける衝撃が大きくなります。柔軟性のある住宅ならエネルギーを吸収できますが、堅さが重視された住宅の場合、受けた衝撃を逃がすことができず、直接ダメージを受ける可能性があります。一度の地震を受けたからといっても倒壊こそしませんが、繰り返しの揺れを受けてしまうと内部構造にダメージが蓄積してしまうため、その揺れを減らす必要があります。
建築基準法が求める「耐震」はそもそも、長く住み続ける事を想定した基準ではありません。それは、建築基準法における耐震性能の定義からも確認できます。
【建築基準法における耐震性能の定義】
震度5以下の中規模な地震に対しては大きな損傷はしない。また、震度6以上の大地震に対しては、居住者の生命を守る(倒壊しない)ことを目的としている。(建築基準法準拠)
2つ目の弱点は先述したとおり、「耐震性能は繰り返す揺れによって劣化する」ということです。
新築当初は耐震性能が高く、設計通りのパフォーマンスを発揮しますが、度重なる地震の影響を受けてしまうと、その性能が次第に劣化します。
日本では、大規模地震に限らず、各地で毎月250回以上発生する中小規模の地震や、台風による揺れによって、構造体にダメージが蓄積していく可能性があります。
これらの「揺れ」を防ぐため、エネルギーを吸収して、繰り返しの揺れにもしっかりと対応できる「制振」が重要となってきます。
この2つの弱点から分かるように、地震が頻発する日本は「耐震」を考えるだけでは限界があり、「制振」によって耐震性能を長持ちさせる必要があるのです。そして「耐震」と「制振」を組み合わせる重要性は、2階建て、3階建ての住宅だけでなく、平屋においても同様です。
制振の重要性が理解できたところで、続いては平屋における誤った地震対策の考え方について見直していきます。
平屋の地震対策の真実
よく言われていることは本当に正しいのか?
地震に強いと考えられがちである平屋ですが、一般公開されている家づくり
情報と、その情報を受け取るユーザーに認識の齟齬(そご)が生まれています。
その原因は、一般の方に説明されている地震の情報が簡略化されており、具体的な情報が伝わっていないことが関係します。
ここでは、平屋に対する一般的な間違った認識として「地震対策についてよくある回答」、そして平屋に対する「真実」について紹介します。
平屋の地震対策についてよくある回答
インターネット等で公開されている平屋の地震対策について、次のような回答をよく見かけます。これらが必ずしも「嘘」ということはありませんが、正しい理解のためには必要な情報が不足していると認識しなければなりません。
①:平屋はシンプルな構造なので地震の際に家にかかるエネルギーが分散され、倒壊のリスクが抑えられる
②:平屋は上の階がなく、家が揺れにくいから地震対策があまり必要ではない
③:住宅会社の担当の方から「平屋は地震に強いから、特にプラスアルファの対策をしなくてもOKです」と言われた
平屋の地震対策の真実
①~③について、正しい理解のために必要な「真実」を確認してみましょう。
①について
平屋は複層階建物に比べて重量が軽いという特徴があるのは事実です。それは建築基準法によって必要な「壁量」が小さく設定されていることからもわかります。
しかしその重量は基準であり、実際の重量を決めるのはあくまでも設計次第です。たとえば屋根を瓦葺きにすると、建物の重量は重くなります。
つまり、平屋だからといって、すべて上屋が軽いとは限らないという点を知っておかなければなりません。
建物の「安全率(=実際に設置されている耐力壁の量÷建築基準法に定められた必要な壁量)」という考え方があります。
工学的には、同じ安全率の平屋住宅と2階建て住宅の倒壊リスクは同じです。必要な壁量が小さいからといって、安全率が低い設計になってしまえば、平屋といえど地震による倒壊のリスクがあるのです。
②について
平屋など建築高が低い住宅なら「振れ幅」が小さいため、揺れにくいという特徴を持ちます。しかし、揺れる角度は階層を問わず同じです。住宅の構造部材の損傷は地震の際に発生する建物の「揺れ幅」ではなく「変形する角度」に依存します。つまり、この角度を抑制する構造を持たない限り、2階建てでも平屋でも、地震によって受けるダメージは同等ということになります。
角度と揺れ幅のイメージ図
③について
住宅会社の営業担当は暮らしを提案するエキスパートですが、住宅の構造について必ずしも専門的な知識を有しているわけではありません。はっきりした表現をしてしまえば、地震対策についてのリテラシーが高いとはいい難い人がいることも事実です。
「平屋ならプラスアルファの地震対策は不要」というのは誤った情報です。鵜呑みにせず、技術職員など専門的な知識を持つ担当に確認するのが望ましいでしょう。
平屋、2階、3階建てを問わず「耐震+制振」が住宅の耐震性能や資産価値を長持ちさせる
地震対策は住宅の高さによって変化すると思われがちですが、実際には階数を問わず「耐震+制振」が必要です。
耐震等級が高い住宅は大規模地震でも直ちに倒壊するリスクが少なく安全に避難できます。しかし倒壊しなくても建物構造には少しずつダメージが蓄積してしまうのです。大小問わず繰り返される地震によって耐震性能は少しずつ低下していくため、耐震等級3という高レベルな性能を持っていても安心できません。したがって住宅の地震対策においては、大規模地震の揺れはもちろん中・小規模地震からも住宅の構造を守る「耐震+制振」を考えた家づくりが重要となります。
これは平屋においても例外ではなく、平屋であるからといってすなわち地震に強いという誤った認識を正し、しっかりと制振を考える必要があります。
制振性能を有する住宅は耐震性能を長持ちさせて、いつまでも続く安全な暮らしを実現します。それだけではなく、住宅の構造全体を守ることで断熱性や気密性など、暮らしの快適さに影響する性能についても、効果が長く続くことが期待できます。
安全と快適が長持ちする家は、資産価値も長持ちします。子や孫に家を相続したり、いつか家を手放したりする際においても、制振性能を有するか否かによって価値は大きく変わるでしょう。「土地には値段が付くけど、建物にはほとんど価値がない」というこれまでの常識は、制振によって塗り替えられることになり得るのです。
さいごに
こちらでは次の情報を紹介しました。
ご参考になりましたでしょうか?
- ・平屋は地震対策があまり必要ではないと思われがちだが、実際には複層階建物と同じように地震対策が必要
- ・耐震性能・安全性・資産価値が長持ちする家づくりには「耐震」だけでなく「制振」も必要
住宅における制振を実現するには「制振ダンパー」という装置を用います。制振ダンパーにも数多くの種類がありますが、選定するにあたっては、このeBookを読んでわかるとおり小さな揺れにも作用するという性能を有するものを選ぶ必要があります。
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