教養としての「住宅制振装置」第一章_品確法制定と耐震等級の誕生
今年は住宅業界にとって様々な面から画期的な年になると予想されています。
そこで、今回から「教養としての住宅制振装置」と題した連載をお届けしていきたいと思います。
弊社では、この連載を掲載するにあたり、90年代以降の住宅における地震対策の歴史を調査しました。
その中でキーワードがいくつか浮かび上がってきました。
・震災
・法律
・大手ハウスメーカーの動き
【第一章】では、上記の「震災」というキーワードから、阪神・淡路大震災を契機として進み始めた我が国の建築基準法の改正がどのような経緯を辿ったか。
また、いまでは一般的に使用されている「耐震等級」という制度がどのように始まり、普及していったかということに関して解説していきます。
【第一章】品確法制定と耐震等級の誕生
神戸震災の被害の検証を契機とした「住宅の品質確保の促進等に関する法律」制定と「耐震等級」誕生の経緯
1995年1月17日、阪神・淡路大震災(神戸震災)が発生し、甚大な被害をもたらしました。
約64万戸の住宅が被害を受け、約4万戸が全壊。多くの木造住宅が倒壊し、新耐震基準(1981年施行)を満たしていた建物でも倒壊例が見られました。
灘区被災状況1
<神戸市広報課発行「震災10年~神戸の記録~」より>(Copyright:神戸市)
この震災は、日本の建築基準や住宅政策にとって大きな転換点になった事は間違いありません。
1.震災後の対応と課題
震災後、建築基準法は1998年に改正され、耐震診断と耐震改修の推進が図られました。
しかし、既存建物の耐震化は遅々として進まず、費用負担や情報不足が大きな課題となりました。
2.「品確法」の施行
震災後の様々な課題を克服するために、2000年6月1日に「住宅の品質確保の促進等に関する法律」いわゆる「品確法」が施行されました。
「品確法」は、住宅の品質確保の仕組みを整備し、それにより建築主と施工者の責任を明確化しました。
さらに、住宅性能評価制度を導入し、第三者機関による検査を義務化することで、住宅の品質を客観的に評価できるようにしたのです。
3.耐震等級の導入:3段階評価と目的
「品確法」に基づく住宅性能評価制度では、耐震性能を3段階で評価する「耐震等級」が導入されました。
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耐震等級1:建築基準法の耐震基準を満たす
耐震等級2:等級1の1.25倍の耐震性能
耐震等級3:等級1の1.5倍の耐震性能
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「耐震等級」を導入することにより、耐震性能の高い住宅の普及促進、地震被害の軽減、安心・安全な住まいの提供ができることを目指しました。
今では当たり前になりつつある「耐震等級」という言葉ですが、実はそこまで歴史のあるものではない、ということがわかります。
今回はいわば序論のようなものでしたが、いかがでしたでしょうか。
少しでもご参考になれば幸いです。
次回は「制振装置」の歴史を紐解いていきたいと思います。
お楽しみに!