制振装置で地震から住宅を守る!制振ダンパーの概要と重要性について

戸建て住宅の地震対策として、建物に耐震だけでなく「制振」の性能を持たせるため、制振装置を用いるケースが増えています。

2016年の熊本県益城町の大地震では、震度7の揺れが二度も発生するという前代未聞の事態に見舞われました。これにより、建物の耐震工法に関する規制をさらに厳格化する法改正が検討されましたが、法の整備面、コスト面の観点から現実的ではありませんでした。そこで制振工法、制振装置に注目が集まったのです。

制振装置の中でも特にメジャーなものが「制振ダンパー」が、現時点ではまだ一般的な認知度が高いとは言い難いでしょう。
この記事では、住宅を地震から守ってくれる制振ダンパーの概要と、その重要性についてご説明します。

制振ダンパー(制振装置)の機能と種類

まず制振ダンパーとはどのようなものなのかご説明します。制振ダンパーとは、振動する建築物や構造の振れを減衰する装置です。

建物が揺れた際に、揺れ続けたり、変形・損傷したりしないように、構造に組み込んだ「ダンパー」と呼ばれる装置が変形することによってエネルギーを吸収し、揺れを抑えます。
自動車などに用いられるショックアブソーバーやサスペンションのようなものをイメージしていただければ、分かりやすいでしょう。

ダンパーには、油圧を利用したオイルダンパーや、ゴムやアクリル樹脂などの粘弾性素材を使ったゴムダンパー、変形する性質を利用した金属ダンパーなど、複数の種類があり、それぞれに異なるメリットとデメリットを有しています。
制振ダンパーの種類や形状による比較を詳しく解説した記事がありますので、併せてご覧ください。
>『制震ダンパーを徹底比較! 種類と形状、失敗しない選び方とは』

なぜ戸建て住宅に制振ダンパー(制振装置)が必要なのか


なぜ戸建て住宅に制振ダンパー(制振装置)が求められているのでしょうか。
それは、従来の「耐震」工法だけでは、大地震から大切な住宅を守り切れないことが分かってきたためです。

十分な耐震構造を持つ住宅でも、大地震で倒壊したり損傷したりしてしまう事例が実際に多く発生してきました。
住宅には、壁量を指標とした「耐震等級」という基準があり、3段階で程度が表わされます。一番低い耐震等級1でさえ「住宅の密集する都市において、震度6強~7程度に対して倒壊・崩壊しない」という定義であり、耐震性をかなり高い水準で追求するものです。

ところが、昨今の日本列島を襲う大地震では耐震等級1や2の建物でも、倒壊してしまったという例があります。倒壊しないはずの耐震住宅は、なぜ倒壊してしまったのでしょうか?

答えは、耐震性能が劣化するためです。
耐震等級が1以上の住宅はたしかに一度の大きな地震に耐えるには十分な構造を有しています。ところが日々発生する小さな揺れによっても住宅の構造は少しずつダメージを受けて変形し、耐震性能は徐々に劣化していくのです。まして大型地震に複数回見舞われることになれば、ダメージを受けた住宅における二度目以降の耐震性能は、大幅に低下していると考えなければなりません。

そのため、耐震構造を守って性能を維持するために「制振」技術としての「制振ダンパー」が注目されているというわけなのです。制振ダンパーが揺れのエネルギーを吸収することで、耐震構造への影響を防ぎ、住宅を守る機能が最大限に発揮されるようになります。

一般的な制振ダンパー(制振装置)は、いつ効き始めるのか

制振ダンパー(制振装置)は、どのようなタイミングで機能するものなのでしょうか。

一般的な制振ダンパーは、震度5以上相当の揺れに(変形)対して効き始めます。大きな地震に対して機能し構造を守るのが、従来の一般的な制振ダンパーの役割です。
ただし、これだけでは建物を守りきることができないことが分かってきました。建物の変形によって、普段見えることのない壁の内部で、何が起こっているのか見てましょう。


大きな揺れでなくても、住宅にダメージを与えていることがわかります。このダメージが重なることによって、住宅の耐震性能は少しずつ劣化してしまうのです。


小さな震動でも住宅はダメージを受ける

「十分な耐震構造と制振ダンパーがあれば、大地震にも耐えられる」という考え方のもと、多くの種類の制振ダンパーが開発されているのが現状ですが、従来の制振ダンパーではカバーできない問題があります。

実は一般的な制振ダンパーが機能しない小さくわずかな揺れであっても、住宅などの建物にはダメージが蓄積されていくことがわかっているのです。

以下の例をご覧ください。

2016年の熊本地震を震度別に分析すると、下記のような地震発生回数であることがわかりました。

「大地震」といっても前後では断続的な無数の小~中規模の揺れが発生しており、小さな揺れに対しても機能する制振ダンパーでなければ、結果的に大地震が発生した場合に住宅の損傷を防げないのです。そのため、従来のものとは異なる、「小さな揺れにも効果を発揮する制振ダンパー」が必要になってきていると言えます。

小さな揺れから効果を発揮する制震装置

ドイツの大手ショックアブソーバーメーカーの技術を用いて作られた制振ダンパー「evoltz(エヴォルツ)」は、特許技術によってわずか3mmの揺れ幅から効果を発揮する設計の制振ダンパーです。

効果の高い制振ダンパーを検討している方は、ぜひ下記リンクを参照してみてください。
evoltz公式ウェブサイト

制振ダンパー設置のメリットとデメリット

制振ダンパーには、メリットもあればデメリットもあります。住宅に制振ダンパー設置を検討する際は、下記のようなメリット・デメリットをしっかり理解しておく必要があります。

制振ダンパーのメリット

制振ダンパーを導入する主なメリットを挙げるとすれば、次の3点です。

 

制振ダンパーのメリット①:耐震構造の破損や消耗を抑え性能劣化を防ぐ

制振ダンパーの最大のメリットであり本質的な役割は、建物へのダメージの蓄積を抑え、耐震性能を長持ちさせることです。

制振ダンパーのメリット②:後付けが可能

新築だけでなく建築済みの建物に対しても、後から制振ダンパーの取付けを行って効果を得ることができます。

制振ダンパーのメリット③:2階以上の上階の揺れを抑えやすくなる

耐震性の高い住宅は揺れが大きくなりがちですが、制振ダンパーを導入すれば揺れ自体が抑えられるため、特に揺れを大きく感じる2階以上で、家具の倒壊リスク軽減できます。

制振ダンパーのデメリット

一方でデメリットとしては次の2点が挙げられます。

 

制振ダンパーのデメリット①:メーカーによって効果に差があり選定が難しい

複数の企業が制震装置を展開していますが、それぞれ特徴や性能に差があり、優劣を見極めるために知識を必要とします。

制振装置の効果を判断するための知識を整理した記事があります。気になる方は併せてご覧ください。
>『制震装置について知るべきコト3選』

制振ダンパーのデメリット②:制振ダンパー単体では被害を防止できないケースがある

建物の耐震構造が弱いと、制振ダンパーを設置していても建物の倒壊・損傷にを防ぎきれないことがあります。耐震と制振をセットで考えることで、最大限の効果を期待することができます。

まとめ:なぜ制振装置が重要なのか

本稿の内容から、制振ダンパーの概要とその重要性をご理解いただけたでしょうか。

耐震性能だけでは、住宅や家族の安全を守り切ることが難しくなっています。耐震性能を劣化させず維持するために、制振性能を併せて検討する必要があるのです。

ただしどの制振装置でも導入しておけば大丈夫、というわけではなく、小さな揺れからもしっかりと作用することで初めて制震装置として意味があることをお伝えしました。

特許技術により、ごくわずかな揺れからも作用する「evoltz」について詳しくまとめた資料があります。無料でご覧いただけますので、興味のある方はぜひダウンロードしてみてください。