対談:evoltzは速度依存型のダンパー

渥 美:制振が部材からシステムに変わり、そして更に工法に変わってきています。当社も制振メーカーではなく、さらに工法・構造に関わっていく仕事なのかなと思っています。
そういう中で、今後制振工法・制振装置に何を期待するか、こういうのがあるべきじゃないかなど、構造のプロ佐藤先生からすると、どのように求められると考えられますか?

佐藤氏:まず部材からシステムとか工法になったっていう話は確かにそうですね。やっぱり実験を見て、制振装置を付けることで耐震等級3の家をさらに守り続けるっていう、その上の性能を考えた時に、制振装置に限らず建物はもう工法でもないかなと思っていて。国民の命を守る、かつ生活というものを幸せなままの状態を守るための仕組みだと感じています。だから工法を超えているというか、耐震等級3もそうですけど、工法を超えたその先かなと思います。まずはそれがひとつある形。

ーじゃあ、具体的に制振装置の話になると

渥 美:住宅に使う制振装置というのは、層間ダンパーと言って建物のフレームの中に入れるダンパーがメインです。ダンパーも大きく分けると、変位依存型速度依存型があります。変位依存型は建物が大きく変形するときに地震力を吸収するもの。速度依存型は、建物の変形する速度に反応して効くもの。速度というとイメージがわかないと思いますが、例えば地震で建物がすごくゆったり揺れる時は揺れる速度が遅いです。その時は、効きにくいかもしれないけど、例えば建物がガタガタガタガタ揺れる時の早さに応じてダンパーが効いてくると速度依存型。これがふたつあるのです。速度が速くなればなるだけ、その吸収力が増える。ちなみにevoltzは速度依存型のダンパーです。

佐藤氏:変位依存型はちょっと危険な考えだと僕は思っています。耐震等級3の工務店に、とある制振メーカーの営業マンから「私たちの制振装置は壁倍率があるから、耐震等級を下げていいです!」という売り方をされるという話。
一見すると、その制振装置は壁倍率を持っているから、その壁倍率の影響で耐震等級3になり、さらに制振装置があるように聞こえます。一瞬ね。けど実はそうじゃないです。ホンネを言えば、私たちの制振装置を耐震等級3に付けたら、硬くて効かないです。だからできるだけ耐震性能は下げて、地震がきたら建物が早く壊れる状況にしてください。壊れてきて、傾きだしたら制振装置が効きますから、制振装置を効かせるには建物は弱くしてくださいって言っているのとイコールです。

佐藤氏:それって、制振装置が効くタイミングがどこかって言ったら、もうある程度傾いて、建物の耐震性能が落ちてきてから効く場合が多いです。だから効きましたね、倒れなくて良かったですね、もう住めませんっていう状況を作るのとイコールなので。そういう営業トークとか、そういう考えはやめた方がいいですね。